どんな変化にも悠然とかまえる「なあなあ」の精神を。『神去なあなあ日常』
初めて読んだ、三浦しをん著作。
先に「ラジオ版学問のすすめ」というポッドキャストで、三浦しをんさんが喋ってるのを聞いて、気になった本書。
Kindle版が出てたので読んでみた。
ニート予備軍が主人公
進路を決めないまま、卒業間近になった青年 平野勇気 が主人公。
彼が担任の策略・・・いやおせっかい?により、山奥僻地の「神去」という場所に林業研修生として送られるところから話が始まる。
勇気は当然、林業なんかやりたいとはこれっぽっちも思っていなかった状態。
厳しい仕事が嫌になって、脱走を企てたりもする。
とはいえ、だんだんと仕事にも慣れ、神去村独特のおっとりとした生活リズムや信仰を自然に受け入れられるようになる。
「なあなあ」という「悠然としたかまえ」
神去では独特の方言が話されていて、その中でも特徴的なのが「なあなあ」。
タイトルにもなっている「なあなあ」は、「ゆっくりいこう」「まあ落ち着け」といったニュアンス。
林業は山でやるものなので、自然の力などどうしても抗えない部分がある。
そういった要素に対して、無理に何かアクションを起こしたり、恨んだりといったことは得策ではない。そこで、「なあなあ」の精神が出てくる。
長い長い年月をかけて木を育てる林業は、どんな風雪が襲ってきても悠然とかまえていられる性格じゃないと、とても勤まらないのである。
作中では、林業をする者が山で亡くなったとしても、それは「なあなあ」だと言われている。
そのくらいの、どっしりと構えるスタンスである「なあなあ」。
この「なあなあ」が、ちょうど自分に足りない要素なので羨ましくなった。
仕事をする上で、「なあなあ」と思えるだろうか。
それこそ林業にむりやり連れて来られた当初の勇気のように、「やりたくない」「なんでこんなこと」と思うことは、仕事上たぶん出てくる。
そんなときにも、なあなあと思って、悠然とかまえていられる自分になりたい。
ちなみに勇気の場合は、先輩の村人たちと林業をやっていて、気持ちに変化が現れている。
季節の移り変わりに応じて、同じような作業を繰り返してるかのように見えるけど、本当はそうじゃないんだってことが、一年経ってやっと少しわかった。 山は毎日、ちがう顔を見せる。木は一瞬ごとに、成長したり衰えたりする。些細な変化かもしれないが、その些細な部分を見逃したら、絶対にいい木は育てられないし、山を万全の状態に保つこともできない。 ヨキ、清一さん、三郎じいさん、巌さんの働きぶりを見て、俺はそれを知った。 山で小さな変化を見つけるのは、とても楽しい。
勇気が本当に羨ましくなった。*1
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2012/09/07
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*1:かといって山に行くのは勘弁・・・。ブログ書けないから。